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未知の世界に着陸。生存者は私だけだ。
スペーススーツの破損を確認したが、奇妙なことに呼吸に問題無い。
ブリッジから巨大な樹が見える。これより、調査活動を開始する。
後に、巨大な樹に到達した。樹の根元には白い結晶が張り巡らされており、突破は困難だ。
また、樹はこの世界に存在した現住生物の骨と思われる物が集約し、大きな樹として成り立ってる。

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この世界に知的生命体は存在しない。宇宙船は、過去の戦闘により損傷が激しく修復は絶望的だ。
しかし、私と同じように、この世界に漂着した複数の異星人と遭遇した。
初めに出会った彼は、真っ黒な鳥だった。
気さくな彼は、この付近に私と同じような境遇に置かれている、異星人達の住まう集落が存在すると教えてくれた。コンタクトを行った彼の話をもとにポイントに向かって歩く。しばらく進むと中規模程度の集落が見えてきた。
そこにはかつて敵として戦った星に住まう者も居た。
様々な憎しみが心の底より染み出してきたが、それは相手も同じだ。争うだけ無意味だろう。

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私の船に搭載されていた支援型ドローンを起動。
ドローンと共に物資を集落に搬送中に、巨大な敵生命体と遭遇した。
結果、物資の大半が失われた上に、ドローンも大破し使い物にならなくなってしまった。
友人のカラスから聞いた話では、あれは『竜』と呼ばれるもののようだ。
竜は手あたり次第、破壊活動を行っている。
本来『竜』はこの樹を護衛するために作られたが、何者かにハッキングを受け
敵対行動をとるようになったという。私達は竜の体組織を採取し集落へと向かった。

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樹の内部に我々が行くことは不可能だが、探査機越しに樹の中の世界を観測することが可能である。
探査機のデータを解析したところ、我々と姿形が大きく異なる生命体が存在していた。
それらは互いに寄り添い、時に殺し合いを行う。
調査を進めた結果、彼等の頂点に君臨する者の多くに竜に共通する体組織が確認できた。
方法は不明だが、竜は樹の内部にまで攻撃を行っているようだ。
しかし、樹を直接破壊する行為は行なっておらず、目的も不明である。

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竜の樹に対する攻撃が激化してきた。
樹の機能が損なわれると、この世界そのものが消滅する可能性が高い。至急、集落の人々と対策を練る。
情報を照合した結果、この世界に侵略行為を行う存在を特定した。
それは別の宇宙が一つの生命体に昇華したものらしい。我々は敵性銀河に、『NGC X442』と命名した。
NGC X442の意図は不明だが、竜の制御を乗っ取った後、樹に対する攻撃を現在にわたり行っている。
また、NGC X442はかつての大きさから著しく縮小しているが、通常の兵器で排除することは不可能なほどに巨大である。

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竜の一体を鹵獲することに成功した。
雌の個体で、体内に幼体を複数身ごもっていたため至急解体しサンプルとして抽出した。
摘出した幼体をべースに、竜に対抗する兵器の開発に取り掛かった。後にプロトタイプである0号が完成し、さっそく運用試験を行った。
しかし、0号は竜に攻撃を行った際、制御不能に陥り自壊してしまったのだ。
すぐに判明したことだが、竜に備わっている同士撃ち防止機構が働いたものによる結果だった。

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同士撃ち防止機構を無効化した兵器1号が完成。これをベースに兵器の量産を開始した。
量産された個体を『神』と命名し、樹の周辺や内部に配備した。
しかし、竜との戦闘で神のほとんどが破壊され、大きく戦力を欠いてしまった。
また、悩ましいことに神の中に自らの存在に疑問を抱き、自害したり反乱を起こす個体が現れ始めた。
現存する神を招集し、思考、記憶に対し初期化を実行した上で、それらに対し樹を守護する者としての潜在的な意識をインプットした後、樹の周辺、および内部に配備した。念のため、ダミーの記憶データを神々に上書きし、彼等の意思の統率を計る。結果、神々は偽りの記憶を妄信し、樹の存続のために戦い続けている。


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集落に保管してあった自己進化型人工知能、『VA……A…A』 が起動された。樹の内部に投入し自己進化の誘発を計り、NGC X442を排除する手段を研究させる。
私達の敵側の星の者から、そのように提案があった。この状況で手段は選んでいられない。集落の皆も私も、彼女の意見に賛成した。
この人工知能は非常に優秀で、敵を確実に排除する兵器や、効率よく他者を支配するプロセスの開発などを瞬く間に行う。敵として戦った私は、それの恐ろしさを身をもって思い知らされている。
しかし、相手は惑星サイズの怪物だ。その効果に疑問を抱かざるを得ない。

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VA……A…Aが制御を受け付けなり、どれほどの時が流れただろうか。
竜の攻撃は激しさを増すばかりだ。
つい先日、最後の仲間が逝ってしまった。彼女はかつての敵だったが、私を攻撃から庇い押しつぶされてしまった。
さらに、樹の外部に配備していた神は全滅し、内部に残っている個体も驚くほどに激減している。
しかし、私は最後まで戦おう。もうどこにも逃げ場はない。ここが私の家だからだ。
みんな、すぐにそちらに行く。それまで待っていてほしい。
記録者:V・L